前回に引き続き「AIで書いてみた」シリーズです。Claude 3.5(Sonnet)で事務所のブログ記事を書いたところ、脱稿後にClaude 3.7(Sonnet)がリリースされました。そのため、全く同じテーマとプロンプトでClaude 3.7(Sonnet)でも裁判例の分析を行いました。
素材として取り上げた裁判例は、東京地判令和4年3月11日判時2523号103頁〔ルブタン事件第一審〕と東京地判令和5年9月28日〔トリップトラップⅢ第一審〕です。本文は一切修正しておりません。それではご覧ください。
木村:添付の2つの判決を比較しながら分析して3000字程度で解説記事を書いてもらえますか?特に「商品等表示」の解釈について注目してください。
はじめに
不正競争防止法(以下「不競法」)は、他人の商品等表示を無断で使用し、混同を生じさせる行為を不正競争行為として規制しています。特に商品の形態(デザインや色彩を含む)が「商品等表示」として認められるためには、一定の厳格な要件を満たす必要があります。今回は、この点に関連する2つの判決を比較分析します。
1つ目は「トリップトラップ事件」(令和5年9月28日判決)で、子供用椅子のデザインが争点となりました。2つ目は「ルブタン赤底靴事件」(令和4年3月11日判決)で、高級靴の赤い靴底が商品等表示に該当するかが争われました。
両判決における「商品等表示」の判断基準
共通する判断基準
両判決は「商品等表示」の該当性について共通の判断枠組みを示しています:
1. 特別顕著性: 客観的に他の同種商品とは異なる顕著な特徴を有していること
2. 周知性: 特定の事業者によって長期間独占的に使用されたか、短期間でも極めて強力な宣伝広告がされるなどして、需要者の間で特定の事業者の出所を表示するものとして周知になっていること
これらの要件は、商品の形態が本来的に商品等表示を目的としたものではなく、機能性や美観のために選択されるものであることを踏まえて設定されています。
複数の商品形態を含む表示の判断
両判決において重要な判断枠組みとして示されたのが、商品等表示が複数の商品形態を含む場合の取り扱いです。
トリップトラップ事件では、「不競法2条1項1号又は2号にいう商品等表示に該当すると主張された表示が複数の商品形態を含む場合において、その一部の商品形態が商品等表示に該当しないときは、上記表示は、全体として不競法2条1項1号又は2号にいう商品等表示に該当しない」と判示されました。
ルブタン赤底靴事件でも同様の判断枠組みが示され、「商品に関する表示が複数の商品形態を含む場合において、その一部の商品形態が商品等表示に該当しないときは、上記商品に関する表示は、全体として不競法2条1項1号にいう商品等表示に該当しない」としています。
この判断枠組みは、特定されていない多様な商品形態まで保護すると、公正な競争を阻害し、創作活動を萎縮させる危険があるという政策的配慮に基づいています。
トリップトラップ事件の分析
事案の概要
原告は「TRIPP TRAPP」という製品名の子供用椅子のデザイナーとメーカーで、この椅子の特徴として、①左右一対の側木(2本脚)に座面板と足置板が固定されている点、②側木と脚木が約66度の鋭角による略L字型の形状を形成している点(「本件形態的特徴」)を主張しました。被告は類似した椅子を製造販売しており、原告はこれが不正競争に当たると主張しました。
判決の要点
裁判所は、原告の主張を退け、以下の理由から本件形態的特徴は商品等表示に該当しないと判断しました:
1. 原告が主張する本件形態的特徴は、具体的な図面や写真で特定されたものではなく、文字による抽象的な特定にとどまるため、直線的構成美を欠く非類似の形態を広範かつ多数含む。
2. 被告製品は、座面板・足置板の固定方法が原告製品と異なり(支持部材・固定部材・ネジ部材を使用)、原告製品のような究極的にシンプルな直線的構成美を欠いており、全体的印象が異なる。
3. 本件形態的特徴のみでは、直線的構成美を欠く非類似の商品形態を多数含むことになり、これを商品等表示として認めると、公正な競争を阻害するおそれがある。
ルブタン赤底靴事件の分析
事案の概要
原告はハイブランド「クリスチャン・ルブタン」のデザイナーとメーカーで、女性用ハイヒールの靴底に特定の赤色(「原告赤色」)を付した表示(「原告表示」)が商品等表示に該当すると主張しました。被告は赤い靴底を持つ女性用ハイヒールを販売しており、原告はこれが不正競争に当たると主張しました。
判決の要点
裁判所は、原告の主張を退け、以下の理由から原告表示は商品等表示に該当しないと判断しました:
1. 原告表示は、女性用ハイヒールの靴底に原告赤色を付したものとだけ特定され、形状や質感、光沢等について何ら限定がなく、広範かつ多数の商品形態を含む。
2. 原告商品の靴底は革製で光沢のある赤色(ラッカーレッド)であるのに対し、被告商品の靴底はゴム製で光沢のない赤色であり、材質等から生じる光沢・質感において明らかに印象が異なる。
3. 赤色は靴底を含むファッション商品において古くから一般的に使用されており、原告表示は特別顕著性を欠く。また、日本での販売期間や宣伝広告の方法・程度からみて、周知性も認められない。
両判決から見える商品等表示該当性の厳格な判断
両判決から、以下の共通点が浮かび上がります:
1. 商品形態の特定の重要性
トリップトラップ事件では、文字による抽象的な特定にとどまる形態的特徴は、広範な形態を含むため商品等表示として認められにくいことが示されました。ルブタン事件でも同様に、色彩のみを特定し、光沢や質感を限定していない表示は、多様な形態を含むために商品等表示性が否定されています。
2. 取引の実情を踏まえた判断
両判決とも、実際の取引における需要者の認識や識別可能性を重視しています。トリップトラップ事件では椅子のデザイン性や直線的構成美に着目し、ルブタン事件では高級ブランド品と手頃な価格帯の商品の違いや、需要者が商品選択時に注目する点を考慮しています。
3. 公正競争確保の政策的配慮
両判決は、商品等表示の範囲を広く認めると、本来誰もが自由に使用できる形態や色彩の使用を不当に制限し、公正な競争を阻害するおそれがあることを強調しています。
実務上の示唆
これらの判決から、商品形態を商品等表示として主張する際の実務上の示唆として以下の点が挙げられます:
1. 具体的かつ限定的な特定: 商品等表示として主張する形態は、図面や写真等を用いて具体的かつ限定的に特定すべきである。
2. 差異化要素の明確化: 他の同種商品と明確に区別できる特徴的な要素を明確に示す必要がある。
3. 使用実績の立証: 長期間の独占的使用や強力な宣伝広告による周知性を具体的に立証することが求められる。
4. 需要者の認識の調査: 需要者が当該形態を出所表示として認識しているかについて、適切な調査方法による実証が重要である。
結論
商品の形態が「商品等表示」として保護されるためのハードルは高く設定されており、裁判所はその判断に慎重です。これは、商品形態の保護と自由競争の確保とのバランスを図るためであり、知的財産法制度全体における役割分担(意匠法による保護との関係等)を踏まえたものといえます。
事業者としては、商品の形態的特徴を保護するためには、不競法だけでなく、意匠権や著作権などの知的財産権を適切に取得・活用する戦略的アプローチが求められるでしょう。
いかがでしたでしょうか?生成AIの進化によりかなり精度が上がってきています。記事の執筆に限らず、今後も生成AIの活用法を探っていきたいと思っています。
