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台湾のパブリックアート政策、パーセント・フォー・アート

by 弁護士 木村 剛大/Kodai Kimura

2019年2月3日

台北の観光地として有名な超高層ビル台北101の周辺は、パブリックアートによって彩られている。オフィスタワーの前には、新宿アイランドタワー、ニューヨーク、シンガポールなど世界各国で愛されているロバート・インディアナ(Artsy: Robert Indiana)の「LOVE」が設置されており、日中は写真撮影をする人々の列が絶えない。

ロバート・インディアナ「LOVE」筆者撮影

台湾では「パーセント・フォー・アート」といって、公共建築物の総工費の約1%をアートに割り当てる取り組みが制度化されている。これは日本では導入されていない制度だ。

最も広く知られているのは、アメリカのパーセント・フォー・アート・プログラムで、その起源は1930 年代のニューディール政策にまで遡る。第二次世界大戦の影響により、この制度は1943年に一度消滅するが、その後1962年に連邦施設管理庁(General Service Administration)により同様の取り組みが制度化され、各州へと広がっていった。

台湾では1992年に文化芸術奨励法(Culture and Arts Reward Act)が制定され、その9条で次のように定められた(一部を抜粋)。これが台湾におけるパーセント・フォー・アートの最初のステップとされる。

「公共建築物の所有者は、建築物及び環境の美化のために芸術作品を設置するものとする。また、当該芸術作品の価額が当該建築物の工事費の1%を下回ってはならない。

大規模な政府建設事業では、環境の美化のための公共芸術作品を設置するものとする。当該芸術作品の価額は、前項の割合制限の対象から除外されるものとする。
公共の用に供する建築物の所有者、管理者又は使用者が、建築物及び環境の美化のための芸術作品を導入し、かつ、当該芸術作品の費用が建築物の工事費の1%を超える場合、政府は、金銭的報酬を与えるものとする。」

MRT(地下鉄)の駅でもパブリックアートを目にする機会が多い。台北101/世貿駅では刻々と表情が変化する「The Moment We Meet」が人々の目線を惹き付ける。

Hsin-Chien Huang, The Moment We Meet@台北101/世貿駅

台北駅でも、ひと際目を引く鳥人間が現れる・・・「Daydream」というパブリックアート作品である。台湾人の友人も画像を見せるとすぐに分かったようで、「Daydream」まで案内してくれた。

Joyce Ho/Craig Quintero, Daydream@台北駅、筆者撮影

台湾のパブリックアート政策の次のステップは1998年。文化建設委員会(Council for Cultural Affairs (CCA)、現在の文化部(Ministry of Culture))が全国統一のパブリックアート設置規則(Regulations Governing the Installation of Public Artwork)を制定し、アート作品の選定、評価、設置方法について詳細を定めた。

TAIWAN Public Artというサイトを見ると、現在では1300を超えるパブリックアートが登録されている。台湾には美味しいものもたくさんあるが、面白いパブリックアートもたくさんある。台湾の楽しみ方のひとつに、パブリックアート巡りを加えてみてはいかがだろうか。

参考文献、ウェブサイト